認知症と向き合う覚悟:介護福祉士 和田行男

  • 9 年前
【尊厳ある人として“普通に生きる姿”を支える】
日本全国で200万人を超えるといわれる認知症。その介護の世界に、新しい風を吹き込み続ける和田。介護の現場に飛び込んだのは、25年前。その当時、認知症になれば、多くの行動が制限され、“普通の暮らし”とはかけ離れた状態で介護されることが当たり前のことと思われていた。
そうした状況に疑問を感じた和田は、介護の仕方によっては“普通に生きる姿”を続けられると主張。認知症のお年寄りたちが家庭的な環境のもと、少人数で共同生活を送る「グループホーム」で、先駆的な取り組みを続けてきた。
和田の施設では、お年寄りたちは、自分でできることは自分でするのがルール。包丁を握り、火を使って料理をし、洗濯、掃除を行い、街へ買い物や散髪にも出かけていく。もちろんすべてを完璧にこなせるわけではない。けがや事故のリスクも常にある。それでも和田は、お年寄り1人1人の認知症の度合いや身体能力などを見極めながら、できる限り“普通の暮らし”を維持できるよう奮闘し続ける。

【何があっても、“人の尊厳”を守る】
和田の施設では、夜間帯以外は玄関に鍵をかけていないため、出入りが自由にできる。
もちろん鍵をかけない分、入居者が外に出れば、扉につけたセンサーが鳴ったり、職員が付きそうなどの安全対策は講じている。しかし、職員が一瞬目を離した隙に出て行ってしまい、長時間行方不明になってしまうケースもどうしても発生する場合がある。そうしたアクシデントが起きるたびに「鍵をかけないのは危険だ」という批判を受けてきた。
それでも、和田は鍵をかけようとはしない。鍵をかけ、行動を制限すれば事故などのリスクは減る。しかし、和田は、安全を確保することだけが唯一正しい答えとは言えないのではないかと、常に自分の胸に問いかけ続ける。
和田は言う。「人間って何がすてきって、自分の意志を行動に移せることってどれほどすてきか。その人間にとって一番すてきなことを奪ったらあかん。できるだけそのことを守る、守り手にならないかんと思っている」。

認知症になる前とほとんど変わらない姿がそこにはある。
自問自答を続けながら、和田はお年寄りたちと向き合う。

【労働者離職防止の身内放り込み策???】
2015年10月23日
 介護離職をなくすために特別養護老人ホームをどんどんつくる。
 総理大臣がいきなり、国民に向かってそう言ったが、親や配偶者の介護で離職する人をなくすために「要介護状態になった親や配偶者は施設に放り込みまっせ!安心しなはれ」と宣言したってことやろ。う~ん…。

 確かに、親や配偶者が要介護状態になり、そのことで続けたい仕事を辞めざるを得ないのは、本人の意に反するばかりでなく社会的な痛手でもある。そこは理解できる。

 でも、そのために必要な手立てが「特養」というのでは、要介護状態になった親や配偶者にとって「良い手立て」といえるだろうか。

 良い手立てと思って「特養の増設」を宣言したのだろうが、総理は「特養の現状」をどこまで把握して言っているのか疑問である。

 ならば総理、いっそのこと「建物の基準の見直し」「人員配置基準の見直し」「運営面での見直し」など、「特養の大改革」まで合わせてぶち上げてはどうか。

 ダダ広い建物の中に閉じ込められて、24時間陽に当たることもなく、地域社会と隔絶した施設社会の中だけで暮らさせられている人たちがどれほどいることか。

 平成22年度に行った研究事業でも、「日中と就寝時の着替えをする」「マンツーマンで入浴ができる」「随時の排せつ支援を受けられる」「起床・消灯時間に決まりがない」など、どの項目でもグループホームを下回っていたが、それは職員さんたちの問題ではなく、さまざまな「基準によるもの」といっても過言ではない。

 労働できる人から要介護状態にある親や配偶者を切り離す的発想ではなく、要介護状態にある人たちに「尊厳が保持され、有する能力に応じ自立した暮らし」(介護保険法の目的)を送っていただくために何が必要かの視点から考えて、取り組んでいただきたいものだ。
 http://www.caresapo.jp/senmon/blog-wada/16379

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